手筒花火ができない地域がある!?役所の対応に法的に問題はない?花火を行うときの許可申請事情

煙火消費許可申請の事情

花火を行うには都道府県知事の許可を得る必要がある

一定以上の数量の打ち上げ花火を行おうとする時には煙火消費許可申請手続きを経て都道府県知事の許可を得なければなりません。手筒花火(噴出煙火)もこれに該当します。

許可を得るために満たすべきルール(保安距離など)は都道府県で異なる

煙火の消費に関するルールは、火薬類取締法を始め、経済産業省令、都道府県の定めにより制定されています。

火薬類取締法・火薬類取締法施行令

火薬類の取り扱いに関し、製造や貯蔵、販売などに関する事柄や管理体制について定められています。

煙火の消費について都道府県知事の許可を必要とすることは火薬類取締法の第25条1項によります。
火薬類取締法では煙火の消費について保安距離など具体的な定めはしておらず、経済産業省令で定めることとしています。これは第25条4項によります。

経済産業省令

火薬類取締法並びに火薬類取締法施行令に基づき火薬類取締法施行規則が制定され、より具体的なルールが定められています。

煙火消費の保安距離については第56条の4に定められていますが、この時点では必要最低限の定めとなっております。

手筒花火の製造については第5条35項によります。
手筒花火の消費については第56条の4、6項によります。

事故などがあった時に、第56条の4、6項1号から6号に違反がある場合は法令違反ですので刑事罰の対象となります。手筒を揚げる際に必ず教わる「絶対に噴き出し口を観客の方向に向けてはならない」「点火者は危険区域内に関係者以外がいたら点火してはならない」という注意事項は、4号「火の粉が十分に噴き出している間は、噴出口及び筒底を自己又は他人の身体に向けないこと。」並びに5号「手筒煙火の消費に際しては、あらかじめ定めた危険区域内に関係人のほかは立ち入らないような措置を講じ、危険がないことを確認した後でなければ点火しないこと。」に基づく指導です。単なるお小言ではなく法で定められた重要な注意事項です。

都道府県ごとの細則

各都道府県は火薬類取締法並びに火薬類取締法施行規則に基づき火薬類取締法施行細則を制定し細部を決定づけています。

また消費許可申請手続きをより円滑に行うために、煙火の種類や薬量ごとの保安距離を定め「煙火消費許可申請の手引き」が用意されます。噴出煙火(手筒花火)の薬量ごとの保安距離は、この段階で都道府県ごとに定められます。

窓口対応を行う権限移譲された地方自治体

権限移譲されている地方自治体は、各々の都道府県ごとに定められた詳細な規則に則り、提出された煙火消費申請の消費計画が保安基準を満たしているか判断します。

権限移譲された自治体や担当者により県の定めたルールの解釈が異なる場合がある

権限移譲された自治体担当者は、申請された消費計画が保安基準を満たしているか判断します。判断は都道府県ごとに定められた規則に則られるべきなのですが、細部になると解釈を要する判断事項があり、その解釈が異なることから地方自治体ごとにルールが異なる場合があります。

「権限移譲」の履き違え

権限移譲された自治体には裁量権があります。自分の考えに基づき問題を判断・決定し、処理することができます。

これが、担当者によって大変厄介なことになります。

問題の判断・決定は都道府県ごとに定められた規則に基づくべきですが、何の根拠もない自分の意見を持ち出し押し付けてくる担当者がいます。これが大変厄介です。意義を唱えようものなら「権限移譲されており私の裁量に任されている」と聞く耳を持ちません。

 

理解できる現場担当者の裁量例

愛知県○○市

毎年行われる花火大会の小型煙火保安距離について、例年30メートル(本来20メートルであるが安全を考慮し30メートルになった経緯あり)で実施されているが、昨年の様子を見る限り風向きと煙火の種類によっては30メートルでも不十分であることが確認されたため、本年は40メートルの保安距離を取るよう指導。

対応:根拠が実績に基づいており、当現場では消費場所のスペースも十分で40メートル確保することに他の問題も生じないことから指導通り保安距離を確保。

 

問題があると感じた現場担当者の裁量例1

千葉県○○市

千葉県の規則で保安距離20メートルでの消費が認められている煙火について。上空への星の到達距離が80メートルを超えることから、万一倒れたら大変という解釈を加えられ、100メートルの保安距離を取るよう指導してきました。

保安距離は、多くの専門家と関係者により理論値や過去の実績に基づき算出されたもので、この場合の20メートルは上空での飛散半径に基づいています。打ち上げ時の到達高さの距離を含みだしたら、予め定められている保安距離を全否定することになってしまいます。根拠が担当の勝手な理論であり、現場担当者の裁量範囲を逸脱していると考えられます。

対応:担当が頑固で聞かないため、担当部署に「〇〇氏の指導は千葉県の基準を根底から覆すものですが○○自治体としての判断ですか?」と文章で質問。やっと他の方が動いてくれた結果20メートルでの実施となりました。

受け付け担当者の煙火知識が乏しいことは良くあります。分からないなら素直に県の要項に準じてくれれば良いのですが、極たまに自分の脚色を付けたがる担当者がいらっしゃいます。面倒くさいです。

 

問題があると感じた現場担当者の裁量例2

当県の規則で保安距離30メートルでの消費が認められている手筒花火について、不安だから60メートル取るよう要望されました。

手筒を見たことがなく、不安から距離を取って欲しいという気持ちは分からなくもないですが・・・

「スペースは十分にあるので60メートル確保してくれませんか?」と担当は言います。確かにスペースは十分にありますが、そういう問題ではありません。手筒は揚げ手の表情が見える距離で見る場合と、顔も見えない遠く離れた距離で見るのでは迫力が違います。

何となく不安だからという理由で保安距離を倍にされたのではたまりません。そもそも保安距離とは、安全を確保できる最低限の距離として、煙火が分からない人でも判断できるよう定められているのですから、素直に保安距離で実施させて欲しいものです。

手筒花火ができない地域

埼玉県は「埼玉県煙火消費技術基準」で明記

埼玉県では手筒花火を実施できません。

行政手続法の第8条1項では、

行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=405AC0000000088

とあります。埼玉県では埼玉県煙火消費技術基準、第6条2項4号で手筒花火の消費を明確に禁止し公開していますが、これは手筒花火の消費を禁止している事実を示すだけで、なぜ禁止しているのか理由は示されておりませんので不十分と考えます。従って、なぜ禁止に至ったのかの理由を開示していただくよう問い合わせてみます。

兵庫県は噴出煙火(手筒花火)の申請は受け付け拒否

兵庫県は窓口で拒否されます。埼玉同様手筒花火の消費は認められません。どこかにその旨の明記があるのかと探しましたが見つけることができませんでした。

詳細を聞きたく問い合わせてみましたが、所轄の消防は折り返しの電話をいただけず、一切対応拒否。県庁も同様です。文章での質問に対し「無視」です笑。多くの都道府県で申請を行ってきた経験がありますが、兵庫だけはずば抜けて対応がひどいです。

手筒花火ができない地域の対応は認められて良いのか?

手筒花火は、火薬類取締法並びに経済産業省令で取り扱いが明記され、消費が認められている花火です。日本中のほとんどの県で消費が認められているにも関わらず、埼玉県と兵庫県だけ消費できないのはなぜでしょうか。もし、「あぶないから。よく分からないから。」という理由で、「禁止にしちゃえばいいや」ということになっているのであれば問題ではないでしょうか。それではただの業務放棄です。埼玉県と兵庫県だけ、他の県とは異なる納得できる特別な事情がなければならないと考えます。

私が以前申請自体の受け付け拒否をされた時に、担当者の口頭から出たのは「そう決まっているから」でした。理由を求めましたが対応してくれませんでした。
申請を行おうとする者に対する受付拒否の回答が行政手続法第8条1項に準ずると考えられるのであれば、少なくともこの時の対応は十分ではありません。

埼玉県民と兵庫県民は、他の都道府県では楽しむことができる日本の文化を、その機会を奪われています。もし禁止されているのが、打ち上げ花火を含む花火全般だったらきっと許されません。「なぜうちの県だけ花火が禁止なのか!行政の怠慢だ!」と声が上がるはずです。それと同じことです。なぜ手筒花火は切り捨てて良い話になるのでしょうか。公益に反する不当な取り決めではないでしょうか。

また我々業者は、本来日本中で平等にビジネスの機会があるはずなのに、両県での機会を損失することで数百万の損害が生じています(問い合わせ×成約率×平均単価)。更に危惧するのは、これが認められていると、現在消費を許可している県も面倒くさくなって埼玉兵庫と同様に対応を拒否し始めることです。我々業者にとっては死活問題です。