『蓄光塗料』自作のススメ
弊社では「ルミックカラー蓄光塗料」という名称で蓄光塗料を販売しております。蓄光効果を最大限に引き出すための特別な樹脂調整により、最高品質の蓄光塗料を提供しています。
にも関わらず、お客様自身での蓄光塗料自作もオススメしております。
自作をオススメする理由
- 弊社蓄光塗料ではオーバースペックな場合がある
- ユーザーにとって費用負担が少なくて済む
- 自作はそんなに難しいことではない
出来合いの蓄光塗料と、自作で塗料を作った場合のコストは圧倒的に自作の方が安く済みます。
また、自分で塗装してみようという方の知識レベルであれば、自作もそんなに難しいことではないのです。
簡潔に言えばクリア塗料に混ぜて塗るだけです。
ある程度塗装に通じたユーザー様であればメリットが大きいお話ですので、可能であれば自作をオススメしている次第です。
塗料化で難しいのは・・・
蓄光塗料の製造で難しいのは、経年しても変わらない品質を維持するところです。これは、蓄光塗料を製品として販売する場合の課題です。
それを除くと対して難しいことはありません。
つまりユーザーが必要な時に必要なだけ塗料化して使用する分には特別難しいことはありません。
それでもやっぱり出来合いの蓄光塗料の方が安心だというお客様はショップからお好きなカラーをお選びください。
それでは『蓄光塗料』を作ってみよう
蓄光塗料の作り方と塗装の仕方に入ります。蓄光塗装で抑えておきたい重要なポイント2つをご紹介いたします。後は作業性を高めるためのコツをいくつかご紹介いたします。
ちなみに「蓄光塗料」と「夜光塗料」はほぼ同じ物を指す言葉です。ここでは以降『蓄光塗料』といたします。
蓄光顔料の選択 ~ポイントは粒子サイズ~
作業性を優先するのであれば15μm前後の粒子サイズ、発光パフォーマンスを優先するのであれば30μm前後の粒子サイズをおすすめいたします。
小さな粒子サイズの特徴
蓄光顔料は比重が重いため沈殿しやすく、この性質が塗装の作業性を悪くします。粒子サイズが小さい方が沈降速度が緩やかなので作業性は向上します。
但し、2μm前後のグレードになると分散が難しくなり,二次凝集してダマができたり目詰まりを起こしたりする場合があります。従って分散についてあまり気を使わなくて良い15μm程度がオススメとなります。
大きな粒子サイズの特徴
一方で、蓄光は小さな粒子サイズよりも大きな粒子サイズの方が良く光る特性があります。従って発光能力を優先するのであればなるべく大きな粒子サイズを選択することなるのですが、30μmより上のサイズになると一般的なガンのノズル口径では噴き出しできなくなります。30μm前後のグレードが最適ということになります。
着色したい場合はカラー蓄光パウダーを使用しましょう
一般に蓄光顔料には色味がありません。オフホワイトからアイボリー、淡いグリーン色をしています。明るい時にも色が欲しい場合。蓄光にカラー塗料を混ぜて色を着けてもまず発光しなくなります。
カラー蓄光にしたい場合は、着色調整されたカラー蓄光パウダーが提供されておりますので、そちらをクリア樹脂に混ぜて塗料化しましょう。
参考画像はルミックカラーのBlueベース0070番色のBlightを使用しています。
耐光性に注意
ルミックカラーの定番で用意されているカラー蓄光パウダーは、有機着色顔料で着色調整されているので耐光堅牢度があまり良くありません。屋外使用ですと1年は耐えられませんのでご注意ください。
また定番で販売しているカラー蓄光は約30μm品です。
耐光性の良いカラー蓄光や粒子の異なるカラー蓄光は特色対応となります。お問い合わせ下さい。
樹脂の選択 ~特別な気遣いは不要!~
「ウレタン系」「アクリル系」「シリコン系」など塗料樹脂の選択に関するポイントです。
一般的な塗装と同じく加工対象や加工目的から樹脂を選択する
多くの方が「蓄光に最適な樹脂を選ばなければならない!」と難しく考えるようですが、蓄光はほとんどの樹脂と相性が良く、蓄光だからといって「〇〇系を選ばなければならない」というような制限はありません。逆に「〇〇系は避けなければならない」ということもありません。一般的な塗装と同じ考え方で、加工対象や目的により樹脂を選択しましょう。
今回のデモでは、加工対象としてホームセンターで購入した「ステンレス薄板」と「アクリル板」、樹脂はウレタン系を使用しました。
水性塗料の場合はちょっとだけ注意
蓄光には「耐水性(水に対する耐性)」が弱いタイプがあります。それらの蓄光は水性タイプの塗料には向きませんので必ず溶剤系を選択しましょう。
また、一般に水性は溶剤系より硬化に時間を要します。蓄光は比重が大きく寄り易いので、水性の方が作業難易度が上がります。可能であれば溶剤系の樹脂を選びましょう。
ルミックカラーで耐水性がないタイプ
・硫化亜鉛系全般
・N_Green G300,N_Green GLL300で(PS2)の記載が無いもの
透明(クリア)樹脂を選択すること!
必ずクリア樹脂を使用しましょう。カラー塗料に蓄光顔料を混ぜると発光しなくなります。何系の樹脂でも一緒です。必ず透明グレードを選択しましょう。
ホームセンターなどでクリア塗料を探すと『仕上げ用』として提供されているものが殆どだと思います。多くの場合はこの仕上げ用クリア塗料で充分です。
最適な配合比は?
最適な配合比はコレ!…とズバリ明記したいところですが、
- 蓄光顔料の粒子サイズ
- 樹脂の粘度
- 塗装に掛けられる時間
- 塗装技術
などの要因で配合バランスは変わります。塗装に掛けられる時間は業者さんとDIYで大きく異なります。短時間で仕上げるための対応技術もプロと素人では異なります。
とはいえそれでは始まられませんので…
一例をご紹介いたします。スタート時の参考にしていただき、それぞれで微調整を行うと良いでしょう。
蓄光パウダーと樹脂の配合比
今回は工場構内や看板などで求められる程度の仕上がりを想定して蓄光塗料を作ってみました。
◆配合比(重量比)
【樹脂(7):蓄光パウダー(3)】:シンナー(3)
- 樹脂と蓄光を重量比で7:3
- そのできあがり塗料に対し30%重量シンナー添加
最初は【7:3:5】で作ったのですが、少しシャバシャバ過ぎたのでシンナーを減らしました。
終わった後の印象ですが、【5:5:5】くらいまで蓄光を増やしても良いのかなと感じました。 混ぜる順番はどのような順番でも良いですが、粘土の高い樹脂と蓄光パウダーを先に合わせるとダマができやすいので、希釈剤と蓄光パウダーを混ぜてから樹脂を合わせると良いでしょう。
コントロール剤を使う
入手可能であれば、例えば関西ペイントのアルミコントロール剤のような、メタリック・パール系の塗装に最適化された剤などを使用すると作業性が高まります。
ストレーナーを使用しよう
蓄光パウダーは練るようにして丁寧に混ぜればダマはできにくいですが、「面倒くさい!」という方やパウダー顔料に不慣れな方はダイナミックにガバっと混ぜてしまうと思います。そのような場合はストレーナーで濾すとダマが取り除かれ作業性が上がります。
自作蓄光塗料を塗ってみよう
蓄光を塗装する前に ~必ず白で下地を作る~
蓄光は白など明るい面に塗装した場合と、黒や紺など暗い面に塗装した場合を比較すると、同じ量の塗装でも光る強さに5倍も10倍も差が出てきます。加工対象が初めから白あるいは白に準ずる明るい色でない限り、必ずホワイトで下地を作りましょう。
尚、アクリル板など「透明」の場合も白を敷いたほうが良いのは同様です。
下地を敷くもう一つの目的
加工対象がコンクリートや木など塗料を吸いやすい材質の場合、割高な蓄光塗料で目を埋めるのは非常にもったいないです。割安なホワイトで下地を作ってから蓄光塗装した方が経済的です。
※画像では下地の有無でどの程度の差が出るかご覧いただだくために半面のみ下地を敷きました。
蓄光塗料の塗装 ~蓄光ならではのコツ~
いよいよ蓄光塗装です。ここでは蓄光塗装で起きやすい失敗を避けるコツがあります。
蓄光塗装に適さない手法
ここで一つ、蓄光に適した塗装手法について触れておきます。
蓄光顔料の粒子は一般のカラー塗料に含まれる色顔料よりはるかに大きいサイズです。そのため塗料の中で分離しやすく、その性質が作業の難易度を高めています。「砂を液に入れかき混ぜ、液中に分散している間に急いで塗る!」といったイメージが近いです。そのため塗装手法の中には蓄光塗装には適さない手法がありますのでご紹介しておきます。
- ローラー塗装
- 刷毛塗り
- 浸漬塗装
ローラーのスポンジや刷毛が蓄光顔料を大量に含んでしまいます。しゃぶしゃぶの時に刷毛でアクを取る時のイメージが近いでしょうか。蓄光顔料が、スポンジや刷毛にどんどん捉まって溜まってしまいます。大量の塗料で大きな面積を塗装する時はそれも問題ないかもしれませんが、小面積の場合には加工面に塗る蓄光よりも刷毛に溜まる蓄光の方が多く経済的ではありません。浸漬塗装も分離が激しい蓄光塗料には向きません。
スプレーの形式
蓄光塗料の塗装にはエアーでノズルから塗料を噴き出すガンスプレータイプをオススメしておりますが、ガンスプレータイプの中にも向き不向きがあります。
画像右: 塗料カップがガンの上にあるタイプ
沈殿した蓄光がカップからガンへの供給部に溜まりやすく目詰まりしやすいです。こまめに振ってカップ内の沈殿を抑えたり、ノズルを指で塞ぎ逆洗の要領でカップ内の沈殿を抑えながら噴き付けることで塗装可能ですが、コツを掴むのに多少の時間が掛るかもしれません。
カップがガンのサイドについているタイプなどでも,供給部がカップの下部にあるタイプは同様です。
画像左: 塗料カップが下にある吸い上げタイプ
こまめに振って沈殿を抑えながら噴き付ける作業は一緒ですが、沈殿した蓄光が強制的にガンへ送り込まれることはないため、比較的詰まりにくいです。
塗装のコツ
エアー吹き付けと撹拌を同時に行う
塗料を均一に吹き付けます。何度か重ね塗りすることになるのですが、一回の塗料吹き付け後、塗膜が乾かない内に次々重ね塗りしてしまうとキレイな仕上がりにはなりません。
一回噴き付けたらエアブロー(半握りでエアーだけを塗装面に当て乾かす)・指触乾燥(指先で塗膜に触れ乾燥具合を確認すること)します。その間もカップ全体を回すようにして蓄光の沈殿を抑えます。同じ方向に回すだけでは撹拌になりませんので反対にも回しましょう。
トップコートは必要あるか
使用する樹脂や配合量にもよりますが、おおよその場合で塗膜の厚さよりも蓄光粒子の方が大きいため、塗面が波打ちやすいです。そのままで気にならないのであればトップコートは必要ありません。表面を均してキレイに仕上げたい場合はトップコートで覆いましょう。
耐水性のない蓄光顔料を用いた場合は、雨水や空気中の湿気で蓄光が侵されますので、トップコートを必ず行ったほうが良いです。
塗装中に発光輝度を確認したい場合ですが、乾燥していない加工対象を持って暗闇に行ったり来たりするのは大変なことです。のぞき窓を開けたダンボールを用意するなど、加工対象を移動しなくても発光輝度を確認できる準備を前もってしておくと良いです。ブラックライト(紫外線・UVライト)も用意しておくと良いでしょう。