今回は非常にお手軽ながらも本格的な蓄光加工方法をご紹介いたします。
難しい知識は一切不要、どなたでも簡単に蓄光加工が楽しめます。
博士っ
おばあちゃんが夜中おトイレにいく時にいつも同じところでつまづいて怪我しちゃうの。。。
蓄光塗料を使って危ないところに光るマーキングをしてあげようと思ってるんだけど、おすすめの蓄光塗料ってありますか?
やあ、チッコちゃん
いいところに目をつけたな
そのような加工に蓄光は最適じゃぞ!
じゃが、今回の場合蓄光『塗料』である必要はなさそうじゃ
蓄光は塗料だけでなくパウダーでも販売されておるから、それを市販の材料と混ぜて使用すれば今回の目的は達成できるぞ
お手軽に蓄光加工できるおすすめのレシピをUETAYAに紹介してもらうとしよう
この記事ではホビー向けレシピのような紹介となっておりますが、プロの加工業者さんや、蓄光製品の企画・開発にも活用できる技法です。ぜひご覧ください。
加工方法の概要
今回ご紹介するのはコーキング材を使用する蓄光の加工方法です。手芸やアクセサリー作り、DIYなどホビーを楽しむ個人の方々から、専門の施工業者や製品加工の現場で応用活用いただける手法です。
この加工方法の特徴は、
- 材料費が安い!
- とにかく簡単!
- 豊富な活用方法!
結構いい事づくしです♪
用意するもの
- コーキング材
- 蓄光材(パウダー or つぶつぶ or フレーク)
コーキング材
コーキング材とは建築現場などで使用される弾性のある樹脂で、主に隙間埋めなどに使用されます。コーキング材・シーリング材と呼ばれる材料です。用途により様々な種類がありますが、当ページでは比較的広範囲に使用できる変性シリコン系のシリコーンシーラントを使用しました。
シリコーンシーラントはホームセンターなどで手軽に入手できます。値段は300円程度と安く、UVレジンやエポキシ樹脂、アクリル樹脂などと比べると圧倒的な安さです。
尚、当ページでご案内するシリコーンシーラントを使用した加工方法は、ウレタン系など他のコーキング材でも応用いただけます。但し、加工対象との接着性はタイプにより異なりますので用途により材を選択してご活用ください。
必ず「透明」をお選びください
コーキング材をお買い求めいただく時には必ず透明(クリア)グレードをお選びください。
白やベージュ、グレーなどはNGです。必ず透明を選びましょう。ウレタン系など他のシーリング材の場合でも同様です。
コーキングガン・カートリッジガン
シリコーンシーラントなどのシーリング材は人の手の力で押し出すことはできません。専用の器具を必要とします。
この専用の器具、無ければ無いで何とかなります。カッターで容器を切り中身を掻き出して使用できます。使用後はサランラップなどでしっかりと密封することで数ヶ月は保存できます。
ただ、切る時に結構チカラが必要です。お子様や不器用な方では手を切る恐れがあります。
コーキングガンも安いものは300円程度から販売されているようですので、繰り返し遊ぶのであれば購入を検討しても良いかもしれません。
蓄光材
粉末状の蓄光パウダーだけでなく、つぶつぶ加工された蓄光やフレーク加工された蓄光でデザインを楽しむこともできます。100均の蓄光顔料でも結構です。が、様々なカラーデザインを楽しむのであればルミックカラーがおすすめです。
基本的な加工方法
- シリコーンシーラントに蓄光パウダーを混ぜる
- 塗る!(盛る!?)
基本的にはこれだけです。
このシリコーンシーラント、加工時はマヨネーズからグリースぐらいの粘度です。硬化後は消しゴムのような弾力のある塊になります。「塗る」というより「盛る」といった表現の方が適当かもしれません。
(·◇·)
聞いたこと無い難しそうな材料だから使い方も難しいかと思ったら・・・
あんまりに簡単すぎてビックリ(≧∇≦*)
コーキング材は一般の人には馴染みのない材料じゃからの
それではさらに具体的にどのような使用方法があるか見てみようじゃないか!
具体的な応用・活用例
それでは具体的な加工アイデアをご紹介いたします。シリコーンシーラントの特性を活かすことで様々な加工が可能です。
加工対象にダイレクトに塗る
加工対象に直接ペイントする方法です。加工対象にはシリコーンシーラントがしっかりと接着する素材を選びましょう。接着性が悪い素材には不向きです。
具体例1 直接ペイント
蓄光を入れてよく混ぜたシリコーンシーラントをビニール袋に入れ、角を切ってひねり出すと立体ペンのようなペイント加工ができます。
LumickColorの発光確認用サンプルシートもこの手法で作成されています。紙との接着性は結構しっかりしていて、今までに剥がれたり落ちたことはありません。作業性が良く手軽なので重宝しております。
上記は袋から絞り出して立体的に造形する例です。
具体例2 繊維生地に蓄光プリント
インクのような使い方で生地などに蓄光プリント加工ができます。
ナイロンやポリエステルなど合繊のキメ細かい生地だとシリコーンシーラントの食い付きが悪いです。綿など粗めの生地や、羊毛など毛羽の多い生地の方が食い付きが良く、通常の洗濯でも簡単には落ちません。
この手法は、コーキング材が接着する素材であれば繊維に限らず応用可能です。工場内での蓄光マーキングなど、プロの職人さんでもご活用いただけるシーンは多いと思います。(屋外の場合退色にお気をつけください)
この加工のデメリットは、プリント面がペタペタとした滑りのない肌触りになることです(コーキング材の種類によります)。質感が気になる方は小さな面積、ワンポイントデザインにすることで気にならなくなると思います。
この滑りがない質感。例えば「高齢の方が夜間おトイレに行く時の目印として家の段差や床部にマーキングする」などの活用方法では、滑らない質感が逆に転倒防止として安心要素となります。目的によりデメリットはメリットに変わります。
具体例3 凹部へ目埋め(蓄光ライン)
シリコーンシーラントは流動性がないため「目埋め」と表現しましたが、流し込みと表現した方が判りやすいかもしれません。画像では溝のあるアクリル棒とL字の木に蓄光加工してみました。どちらもホームセンターで販売している材料です。加工対象の凹部に蓄光シーラントを流し込む(ヘラで押し込む)ことで、シャープな蓄光ラインの完成です。
ホームセンターに行けば、蓄光テープなどの蓄光グッズが販売されています。それら市販品は、コストの問題で5%~8%、高くても10%程度の蓄光含有量です。思ったより発光が弱くてがっかりしたケースも多いのではないでしょうか。
シリコーンシーラントを使用した加工では蓄光の含有量を自由に設定できるので、市販品とは比べ物にならない、驚くほど高い発光輝度の施工も可能です。
またこの加工方法では版を使用しないので、700μmなど大粒子で高輝度の蓄光顔料を選択することもできます。
ほんとうに簡単なのねっ
お家の中で好きなところにちょっと塗るくらいなら、塗料よりもこの方法の方がずっと手軽ね♪
バッグとか可愛いし、あまった材料で色々遊んでみたい!!
そうじゃな
塗料のような強烈な臭いもないし、今回チッコちゃんがやろうとしている加工はこの方法が合ってるじゃろう
滑りのないペタペタとした仕上がりが、おばあちゃんにとっては滑り止めにもなって一石二鳥じゃぞ
造形・パーツを得る
あえてシリコーンシーラントと接着性の悪い素材の上で造形することで簡単に剥がしてパーツが得られます。
具体例1 クリアファイルの上で造形
クリアファイルは接着性が悪いので、その上で造形すると硬化後に剥がすことができます。
クリアフォルダとの接着性
UETAYAで使用しているクリアフォルダの場合、片面は接着が悪く簡単に剥がせますが反対面は接着が良く簡単には剥がせませんでした。
クリアフォルダのメーカーさんにより様々だと思います。少量で確認してから作業を進めましょう。
具体例2 型抜きで造形
クリアフォルダなど接着性の悪い板状の物で挟み、押し潰して平たくし伸ばしました。硬化後は消しゴム程度の硬さですので、カッターで切ったり、クラフトパンチやクッキーの抜き型などで簡単にパーツが得られます。
お子様向けのワークショップメニューなどに最適です。
具体例3 転写で複雑な柄を得る
更に一工夫することで複雑な図柄をプリントすることができます。シリコーンシーラントと接着性が悪い物を版とすることで、版画のような転写が可能です。
上の画像では、100均で販売しているハンコ自作用のゴム板を、ホビー用のルーターで削って版を作りました。
ルーターで大小様々適当に掘ってみました。掘る深さや大きさで版離れが変わります。小さくて深すぎると剥がす時にちぎれて版に残ってしまいます。ご自身で遊んでコツを掴んでみてください。
この手法、絵心のある器用な方であれば相当グラフィカルな蓄光プリントができると思います。私は絵心がなく器用でもないのでアイデアと技法の提供までとさせていただきます。どなたかがこの技法で素晴らしい作品を作ってくれると嬉しいです!
上の画像では100均で調達した様々な物を版として試してみました。シリコーンシーラントと接着性の悪い凹凸のある素材であれば何でも版になります。一番左は版離れが良いですが、真ん中と右は版にシリコーンシーラントが残ってしまいました。 尚、多少接着性のある素材でも離型剤などを使えば使用することもできます。
蓄光商品の企画にご活用ください
立体感ある蓄光プリントは塗料やシルクスクリーンでは得られません。筆塗り、絵付けとも異なり、特徴的でオリジナリティ高い商品になるでしょう。商品として充分通用すると思います。
工夫により効率良い生産も可能であると考えます。
蓄光商品の新しい加工方法として参考にしていただけますと幸いです。
どのくらい蓄光パウダーを混ぜるといいの?
蓄光パウダーをどのくらいの量入れると最適なのか、目安をご用意いたしました。蓄光パウダーを入れる量により発光の強さ・明るい時の見た目・質感・作業性などが変わります。
上の画像の数字は蓄光パウダーの含有量です。5%はシリコーンシーラント95%:蓄光パウダー5%の配合量です。左の方が蓄光使用量が少なく、右の方が多く入っています。
蓄光パウダー使用量による仕上がりの違い
発光の強さ
蓄光が沢山入っているほどよく光りますが、30%以上、特に40%を超えるとあまり変わらなくなってきます。弊社では30%含有を基本としています。
ホームセンターなどで見かける蓄光製品は4%から8%含有が多いようです。蓄光は原価が高いため、あまり多く含有させると商品代が高くなってしまうためです。
当ページの手法では好きなだけ蓄光パウダーを入れることができるので、市販品では見かけないような強い発光パフォーマンスを発揮させることができます。
明るい時の色相
LumickColorのカラー蓄光パウダーの場合、含有量が多いほど明瞭でビビッドな色相になります。
質感
含有量が少ない方が透明感・光沢があり・みずみずしい印象です。 含有量が多いと、ボソボソして石膏のような質感になってきます。
最適な量は?
最も最適な量をズバリお答えしたいのですが、結局何を優先するかで変わってきます。 例えば蓄光含有量が多いとボソボソとした石膏のような質感になってきますが、土壁のように荒々しく塗りたくったデザインを求めているのであれば最適です。
コストを優先するのであれば,あまり多く入れることもできません。
5%から60%の範囲で、目的に合った含有量を探してみて下さい。
弊社ではそこそこしっかりとした発光パフォーマンスと作業性の良さから30%含有を基本としています。
アイデア次第でいろいろできそう!
私でもできそうなくらい簡単なところが最高ね!!
ほんと便利な方法を教えてもらっちゃった(☆∀☆)
そうじゃろ?
この加工方法は本当に簡単なうえ、仕上がりもしっかりしとるからホビーだけでなく業者さんの加工方法として広まるとよいのぉ
今回の手法は蓄光塗料でなくとも蓄光を活用できる一例じゃ
コーキング材に限らず、クリアな物に混ぜれば何でも良いんじゃ
最初から蓄光塗料に限定せず,目的に応じた材を使用すると良いぞ!
終わりに
今回ご紹介させていただいたコーキング材を使用した蓄光加工。手軽で低コスト、活用方法も豊富といい事づくしです。
ホビーに、DIYに、業務に、様々な場面でご活用いただけますと幸いです!