- 「蓄光顔料は放射性物質ですか?」
- 「人体に影響はありますか?」
- 「皮膚に付いたり口に入っても大丈夫?」
このような安全性についての質問をよくいただきます。
結論から申し上げます。
蓄光顔料は特別心配しなければならないような物質ではありません。
安心してご使用いただけます。
放射性物質の取り扱いにあたっては、国が法律でその定義と取り扱いルールを定め、省庁や関連機関がガイドラインを作成し厳格な運用がされております。
蓄光に放射能はなく、これに該当しません。
一般に販売されている絵の具や塗料の原材料と同程度に安全です。
注意すべき点があるとしたら、信頼できない業者が海外から取り寄せ販売している「異常によく光る商品」などごく一部です。
この記事のもくじ
夏休みの工作で、友達と蓄光を使おうって話になったんだけど…
友達のママが「触っても安全なの?もし口に入ったら大丈夫なの?」「よく分からないものは危険だからやめなさい!」って。。。
私はそんな危険なものじゃないと思うんだけど、説明はできないし、説得もできなくて(。•́︿ •̀。)
こんにちは、チッコちゃん。
チッコちゃんが言う通り、蓄光顔料に危険はないと言って構わんぞ。
蓄光は「特殊なパワーを持つ粉」じゃからの。よく解らない人が必要以上に不安を抱えるというのはよくあることなんじゃ。 一度抱えた不安は「大丈夫だから大丈夫!」では払拭されんからのぉ
チッコちゃんのためにUETAYAに蓄光の安全性についてまとめてもらうとするか。 これを読んで、友達のママの不安をチッコちゃんが解消してあげるんじゃ
現在の蓄光顔料に放射性物質は含まれていない
蓄光顔料は放射性物質ではありません。しかしなぜこの質問が多いのでしょうか。その理由について考えをまとめてみました。
安全性について理解するには、「発光する材料」の種類を分類し、それぞれの違いを理解する必要があります。
発光する材料としては『蓄光(夜光/燐光)』『蛍光』『ケミカル発光(化学発光)』『自発光』があります。
- 「夜光塗料と蓄光塗料の違いは?」
- 「蓄光と蛍光の違いは?」
用語の定義と併せて、それぞれの安全性について解説致します。
「蓄光」(夜光/燐光):放射線物質ではない
外部の光を蓄え、蓄えた光を放出することで発光するのが「蓄光」です。
この現象は科学的に「燐光」と言いますが、一般的には「蓄光」が浸透しています。外部エネルーギーを受けた時と元に戻ろうとする時の状態変化により発光するもので、放射線物質ではありません。
「蛍光」:放射線物質ではない
科学的、広義では燐光・蓄光と同じ発光現象ですが、一般的には外部からのエネルギー供給が途絶えた時に発光が持続しないものを「蛍光」といいます。 ブラックライトで発光する蛍光ペンなど、ライトを消してしまうと発光が止まるのが蛍光、ライトを消してもしばらくの間発光するのが蓄光です。 燐光・蓄光と同じく放射線物質ではありません。
「ケミカル発光(化学発光)」:放射線物質ではない
コンサート会場や釣用品で、ポキっと折っることで発光する商品です。自然界で見られる発光、例えばホタル、クラゲ、ホタルイカ、ウミホタルなどで見られる発光もこの化学発光です。
これは蓄光と同じく状態変化による発光です。蓄光と異なるのは、外部の光をエネルギーとするのではなく、2つの物質が合わさった時に起きる化学反応によりエネルギーを得ることです。元に戻ろうとする時に放出されるエネルギーが発光となる点は一緒で、蓄光と同じく放射線物質ではありません。
「自発光」:放射線の放出あり
太陽光やその他外部からの光やエネルギーを必要とせず、自ら発光する仕組みを持ちます。 よく知られているところでは、蓄光の前身として使用されていたラジウムやトリチウムがあります。これらは放射性物質で、放射線の放出があります。
そうそう。「蓄光」「夜光」「蛍光」この辺りの言葉の違いがよく分からないのよね。。。
ちょっとスッキリしたわ
気を付けるのは自発光だけで、蓄光も夜光も、蛍光も安全なのねっ♪
まぁ安全のレベルにもよるが、少なくとも蓄光は「危険な物質」ではない。「発光する物質」をみんなひとまとめに考えておるから不安になるんじゃろうな。
そうじゃ。「夜光」だけ定義が曖昧じゃから、ほんの少しだけ注意が必要じゃぞ
「夜光」は少し曖昧なワード
暗所で発光する材料や現象を示す言葉として、「蓄光」「燐光」「蛍光」「ケミカル発光(化学発光)」「自発光」は、それぞれが指し示す科学的性質や現象が明確です。「夜光」は他の用語と少し異なり、その使われ方は曖昧です。
- 古くから蓄光を取り扱う有名メーカー「根本特殊化学(株)」さんが提供している蓄光顔料の商品名が「N夜光(ルミノーバ)」
- 根本さんの蓄光顔料を材料とした蓄光製品の商品名に「夜光」と入れる場合がある
- 中国語で「蓄光」を「夜光」と表記する
上記などの理由から蓄光を夜光と表現する方も多く、ほぼ99%「夜光 ≒ 蓄光」と思っていただいて結構です。
ただ、「よる・ひかる」という漢字の意味で解釈すると、広義では化学発光、自発光、蓄光、蛍光、全て「夜光」となります。 中国のバイヤーやAmazonで商品を販売する会社が、化学発光、自発光、蛍光、蓄光、いずれを「夜光」として販売しても虚・間違いとは言えません。
2017年に、基準値を超える放射性物質「トリチウム(自発光)」が含まれるキーホルダーやコンパスがAmazonで販売されており問題となりました。 キーホルダーは中国のMecarmy社で、日本のT社が基準値を超える放射性物質が含まれていることを認識せずに販売していたようです。コンパスは個人バイヤーが無在庫販売で出品していたようです。
上記の2件で出品者が「蓄光」「夜光」「蛍光」「トリチウム」「自発光」どのような表記をしていたかは判りませんが、販売者が発光する物質の種類や一部の危険性を認識していなかったことは間違いありません。今後も、第二・第三の無知な業者や個人バイヤーが、危険な製品を「夜光」と称し販売するケースが出てくるかもしれません(私は防ぎきれることではないので今後も同様な事態が起き得ると考えています)。
「夜光」と表記されている場合(特にアクセサリーやキーホルダーなどの製品)は、「蓄光」なのか「蛍光」なのか「トリチウムなど自発光」なのか、「自発光であれば法律の基準値が守られているか」を必ず確認しましょう。はっきりしない場合は販売者に問い合わせて確認しましょう。はっきりとした回答が得られない場合は購入を避けるのが無難です。
もし購入した「蓄光・夜光・蛍光」表記の商品が、光を溜めなくても暗いところでいつまでも安定して光っているようなら怪しさ満点です。すぐに身につけるのを止め、原子力規制委員会などに相談しましょう。
蓄光が放射性物質と疑われる理由は?
本題に戻ります。なぜ多くの方が「蓄光は放射性物質なのでは?」という疑念を抱くのでしょうか。私は夜光塗料の歴史と、前述した「夜光の定義が曖昧である」ことが原因であると考えます。
夜光塗料の歴史を見ると、その昔(1960年代以前)は、自発光の放射性物質であるラジウム、トリチウムが使用されていました。よく知られるところでは、時計の文字盤などに使用されています。これらは放射能があり被爆することから人体に有害であるとされ、代わりに使用され始め現在でも活躍しているのが「蓄光」です。
昔の夜光塗料には放射性物質が使用されていたことと、現在でも「蓄光」を「夜光」という大きなくくりで表現されることが「夜光塗料=放射性物質?」「蓄光=放射性物質では??」という疑念が生じる理由と考えられます。
余談:トリチウムは安全?危険?
余談ですがトリチウムの安全性について触れておきます。
例えばトリチウムを使用しているロレックスのヴィンテージは有害なのでしょうか。人体に影響があるか否かという視点で見た場合、極微量であることと、使用のされ方から危険性はまず無いと考えられます。
トリチウムが含まれているから即違法・危険ということではありません。冒頭で説明した通り、放射性物質の取り扱いについては厳格な運用がなされており、人体への影響が危惧されるレベルの放射性物質はしっかりと規制されています。規制を遵守し、しっかりと運用管理されている商品は問題となりません。
知識のない業者による、無許可での基準値を超えたトリチウムの取り扱いが違法であり危険であるということになります
危険性について心配しないといけないのは全体のうちほんの少しなのに、そのおかげで発光するもの全体が疑われてる感じねっ( ᵕ_ᵕ̩̩ )
発光の仕組みや分類になるとちょっと難しいからのぉ。
チッコちゃんの友達のママみたいに、難しくてよく分からないものを全部まとめて疑ってかかるのは自然なことじゃろう。
この記事を参考に、それぞれの違いをきちんと理解してもらえばきっと安心してもらえるはずじゃ!
蓄光顔料の歴史と進化
夜光塗料は歴史の中で進化してきました。
昔は光る塗料として、蓄光ではなく自発光で放射能があるラジウムやトリチウムなどが使用されていました。
続いて硫化亜鉛系の蓄光顔料が自発光に代わり主流となってきます。しかし、硫化系であることや亜鉛を含むことから、これも環境や人体への影響を危惧されるようになりました。
開発は更に進められ、現在では成分の安全性はもちろん、残光輝度・残光時間ともに格段にアップしたアルミン酸ストロンチウム系の蓄光顔料が主流になっています。根本特殊化学株式会社のN夜光・LumiNova(ルミノーバ・ルミノバ)が時計産業ではそのシェアの殆どを占めています。
このように、夜光塗料の成分は有害な自発光から無害な蓄光顔料に完全に置き換わりました。現在の蓄光塗料で被爆することはありません。
蓄光の歴史についてより詳細を確認したい方はWikiなどをご参照ください。
「蓄光製品」は、皮膚に付いたり口に入っても大丈夫?
続いて「蓄光」の毒性、皮膚刺激性について説明致します。
「蓄光」の人体への影響については、絵の具や塗料の原材料と同程度に安全です。
蓄光顔料は無機顔料です。人工的に作った石を細かく砕いたものと思っていただいて結構です。化学的に安定した物質で、特別に毒性や刺激性があるものではありません。従って皮膚に付いても特に問題は生じません。
取り扱う際の注意点としまして、石を砕いた破片のような形状をしているため、皮膚の上で擦ったり、目に入った状態で擦ったりすると傷をつけてしまいますので注意しましょう。ネイルのトップコートに利用した場合も同様です。拭き落とす際には、蓄光顔料で爪を傷つけてしまわないよう、たっぷりの除光液で落とすのがオススメです。
細かな粒子ですので、粉塵に関する注意事項は一般的な物質と同様です。
手や肌についても問題ないのねっ
そうだ!
文化祭の出し物は蓄光のボディペイントで光る演出をしようかしら♪
ちょっと待つのじゃ。
肌についても問題がない事と、肌につけても良いというのは意味が違うぞ。
皮膚についても問題ないが、皮膚につけてはダメ
「肌につけても大丈夫ですか?」非常に多い質問です。
皮膚についても問題がない ≠ 皮膚につけても良い
化粧品など「肌につける目的の製品」には、薬機法(薬事法)により使用しても良い顔料が定められており(法定色素)、蓄光は使用が許可されていません。従って、肌につける目的の商品や、そのような使用方法を推奨する商品に蓄光顔料を含有させて販売することはできません。
つまり・・・
「皮膚についても大丈夫ですか?」と質問されたら「大丈夫」とお答えしますが、「肌につけて良いですか?」と質問されたら「ダメです」という回答になります。
「吸い込んだり口に入ってしまっても大丈夫ですか?」と質問されたら「別段毒性がある訳ではないので、口をすすぐ程度で大丈夫」とお答えしますが、「食べたり食べさせたりして良いですか?」と質問されたら「やめてください」という回答になります。当たり前ですね。これと同じことです。
食べる人はいないと思いますが、肌につける目的の商品に蓄光の使用を考える方は結構多いです。これは皮膚に対して安全性がどうこう以前に法律で禁止された行為ですので諦めましょう。
蓄光ネイルって大丈夫?
爪に直接塗る事を目的としたネイル(化粧品)に蓄光を含有させるのはNGです。
注意書きやマニュアルに【必ずアンダーコートを使用し、直接爪に塗らないでください】等表記し、トップコートとして蓄光を含有させた商品は「雑貨」扱いとなるので法を回避しています。市場の蓄光ネイルはほとんどがこの形をとっています。(もし直接爪に塗ってはならないことを表記しない形で販売している蓄光ネイルがあったら、製造者や販売社に知識がないだけでNGな行為です)
※上記事例紹介はUETAYAが法を回避した方法を推奨するものではありません。
注意事項に記載したところで、ユーザーが直接爪に塗る可能性があることは容易に想像がつきます。このような使用方法に対しUETAYAでは「大丈夫」とはお答え致しません。パッチテスト等必要な試験を行い,ご自身で安全性を充分に確認した上で臨むのであれば問題ないと考えます。
ボディペイント用の蓄光・蛍光塗料は大丈夫?
ボディペイント用のインクに蓄光を混ぜて販売するのはNGです。では蛍光はどうなのでしょうか。よく見かけますよね?
ボディペイント用の蛍光顔料には、法定色素として認められた蛍光顔料のみが使用できます。が、法定色素として認められていない蛍光顔料を使用した商品も混在している可能性があるのではないかと思います。
蛍光顔料にも様々なタイプがあり、印刷インクなどではホルマリンが含まれているようなタイプもまだまだ普通に使用されています。コンプライアンス意識が低い業者や無知な業者が「使用が許されない蛍光顔料」でボディペイント用商品を生産したり、海外で生産されたNG商品を仕入販売してしまうことは可能性として考えられることではないでしょうか。
出処の判らない商品や、海外の信用できない製造者の商品、信頼できない販売者の商品は注意した方が良いかもしれません。
食品トレイなどに蓄光を使っても大丈夫?
食品を保存するプラスチック製のタッパや、食事を盛り付けるお皿、飲料を入れるガラスの瓶やコップなどに蓄光を使用して良いかというのも多い質問です。
これに対し、弊社や蓄光顔料メーカーは「推奨していません」というお答えをしております。
食器については食品衛生法により細かな規定があります。薬機法の法定色素のように、使用してよい着色料が最初から定められている訳ではないようで、製品の材質試験や溶出試験により、問題となる成分が基準値以下であるか否かという判断基準のようです。
また直接食品に触れる面や、口に触れる面、触れない面などで試験項目も変わるようで、大変複雑なためUETAYAでは全てを把握・理解しておりません。
この件に関し精通した業界の方が、自身でお調べになって基準をクリアすれば問題ないと思われます。しかしながら、弊社は知見がなく責任持ってバックアップできないため「推奨しておりません」というスタンスとさせていただいております。
現在はポジティブリスト制度に移行しております。
食品と接触する可能性のある食品用器具・容器包装について、安全性を評価し使用を認められた物質や使用可能な量などの条件をまとめた一覧表(ポジティブリスト)を作成し、それ以外の使用を原則禁止するという規制の仕組みです。
薬事法における法定色素のようなものと何となく解釈しております。
染料や顔料などの着色料並びに蛍光や蓄光が、どのような扱いになるのか調べましたが複雑でよく判りませんでした。
そっかぁ
手についても問題ないからと言って、手につけてはダメなのね
↑の解説は、あくまで製品を製造し販売する業者の話じゃぞ。
「肌につけないでください」と書いてあるものを、チッコちゃんが自分の肌に塗ることは別に法律に触れることではない。 なにか起きても自分の責任になるだけじゃ。
じゃが、なぜダメと書いてあるのか解らないくらいなら、やはり止めといた方が良いじゃろう。
ましてそれを人にオススメしたり、SNSなどで拡散するのは特に進められんのぉ。
そうよね
誰がマネするか判らないし、私で問題なくても他の人で問題が起きるかもしれないし
やめておくわ!(* ˃ ᵕ ˂ )b
結論 ~蓄光顔料の安全性について~
蓄光は、その特殊な機能性から安全性について疑念を持たれやすいですが、心配するような危険性はありません。
参考に、wikipediaからも「蓄光塗料」の安全性についての記述を抜粋致しましたので、ご確認ください。
1993年 日本発 放射性物質含まぬ塗料
1990年代になると、地球環境の保全を訴える声が以前にもまして強まったことをきっかけとして、時計業界では、放射性物質が含まれる自発光物質を使った塗料の使用が世界中で中止された。〜
蓄光は『絵の具や塗料などに使用されている一般的な着色顔料と同等の安全性』と考えていただいて結構です。安心してご利用ください。
蓄光は安心できるものっていうのが良くわかったわ
でもどうしよう。。。
説明できるかなぁ( ´^`° )
説明が難しければこの記事をそのまま見てもらえばよかろう
友達のママもチッコちゃんの説明よりその方が安心するじゃろ笑
この記事にないことで心配なことがあればママからUETAYAに電話してもらえば良い
さて、ワシは寝るぞっ
ましてそれを人にオススメしたり、SNSなどで拡散するのは特に進められんのぉ。
博士ひどいっ( ᐪᐤᐪ )
まぁでも。。。。その通りよね(◦ˉ ˘ ˉ◦)
これで友達のママも説得できそうだわ!
博士ありがとっ
おやすみなさい~ଘ(੭ˊᵕˋ)੭*