酢酸(さくさん)
直接の作用
染液に添加することでpHが酸性に調整されます。同じ目的で使用される蟻酸と比べ酸性が弱く、その分幾分安全性が高く、効果は緩やかです。
使用目的
染液を酸性に調整することで様々な効果が得られます。その効果は染色方法により異なります。
具体的な使用例
- 中和剤として:反応染色の染色後アルカリに偏っている被洗物を中性に中和します。
- 促進剤として:酸性染料で染液を酸性にし染着を促進させます。初期酸及び追酸として使用されます。
- 安定剤として:分散染色で染液を酸性にし染色を安定させます。
安全性
酢酸は食品にも使われる薬品ですが、濃縮品は強酸性で皮膚・目を刺激します。取り扱いはゴム手袋・換気が必須です。
類似品
染色でpH調整に用いられる主な薬品
酸性調整剤として
蟻酸
アルカリ調整剤として
炭酸ナトリウム(ソーダ灰)・苛性ソーダ
解説
酢酸は浴中のpHを調整するための助剤です。ホビーではよく「お酢」で代用されますが、余分な成分を含みpH調整能力は低いので実務には適しません。
pHを調整することにより得られる効果は染色方法により異なります。つまり、酢酸を使用する目的・効果は染色方法により異なります。
よくある間違い
酢酸は「促進剤」「安定剤」「中和剤」など、その使用目的により様々に形容されることで「酢酸=促進剤である」「酢酸=色止め剤である」のように点で覚えてしまう方が大変多いです。例えば酢酸が促進剤であるのは、酸性染料による染色を前提とした時のお話しで、反応染色などでは促進効果はありません。
使用目的と効果は染法とセットで覚えましょう!
濃度に注意
酢酸には90%品(氷酢酸)、45%品(工業的に一般)など『濃度』があります。
染色レシピに酢酸の記載があった場合、何%品による添加量なのか確認しましょう。また、お持ちの酢酸が何%品なのかを把握し、添加量を換算して使用しましょう。
例)レシピに90%品を1mL/Lと記載があり、手持ちの酢酸が45%品の場合は倍の2mL/L添加する。