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染料と顔料の違いについて簡単な解説

『染色とは?』を教えて差し上げる際に、まず最初に行う質問が『染料と顔料の違いを知っていますか?』です。染料と顔料の違いを知ることは染色を学ぶうえでの最初の1歩です。
染料と顔料はどちらも着色する目的で提供されている粉末状のものですが、その性質は大きく異なります。

染料と顔料の着色メカニズム

染料と顔料の一番の違いは加工対象を着色する仕組みです。

染料

着色対象の分子構造に対し化学的に結着する

顔料

着色対象に化学的に作用しないため、バインダー(接着剤)を用いて加工対象の表面に留める

把握しておきたい違い

しっかりと把握しておきたい染料と顔料の違いは以下の2点です。

  • 加工(着色)方法
  • 着色対象の元色の影響

加工(着色)方法の違い

染料

染色」により加工対象と染料を化学的に結着させます。染色方法は「繊維・皮革・プラスチック」など加工対象の種類や、染料の種類により異なります。

多くは水あるいは有機溶剤やアルコールに染料を溶かし、熱やpHなどのコントロールにより着色対象の分子と染料を反応させます。

顔料

顔料を、加工対象の表面に留めるための「バインダー」に混ぜて「塗装」します。加工対象に対し接着性の良いバインダーを選択します。

ただ、一般に顔料とバインダーを別々に準備し調合するケースは少ないでしょう。顔料とバインダー、溶媒が最適なバランスで混合されている商品が「塗料」です。絵の具や、塗料、マジックペンなどがあります。絵の具では「水性・アクリル・油絵の具」など、塗料では「プラモデル・木材・金属・外壁」など、マジックペンでは「水性・油性」など、加工対象や目的ごとに調整された商品が展開されており、ユーザーはそれらを「塗る」ことで加工対象を着色します。

着色対象の元色の影響

染料と顔料では元の色の影響に決定的な違いがあります。

染料では元色に足し算

染料は元の色を隠蔽しません。赤・青・黄色などの色を、元の色に加算していきます。

つまり、黒いものを白くすることはできません

「白い染料」はありませんか?とよく聞かれますが、染料に白はありません。染色することで必ず元色より濃くなります。どうしても色を薄くしたい時は、脱色により元色を落としてから再度染色します。ブリーチで脱色してから使用する”ヘアカラー”を想像していただくと分かりやすいと思います。

顔料では元(加工対象)の色より淡い色に着色できる

顔料では加工対象の表面が顔料で覆われます。薄く塗っている内は下地の色の影響がありますが、一定以上の量(厚さ)で塗ることで、下地の影響をなくすことができます。

つまり、黒い物を白くすることができます

染料と顔料の使い分け

顔料ではバインダーにより皮膜が成形されますので元の質感や風合いが損なわれます。一方染料では元の風合いが損なわれませんので、衣類など繊維製品、バッグや財布など皮革製品などによく用いられます。プラスチックやガラス、金属には一般に顔料が用いられます。

一般に加工業者以外の個人ユーザーが何かを着色する時に「染料と顔料どちらを使用しよう?」と選択するケースは少ないと思います。あるとしたらDIYで木材くらいでしょうか。加工対象ごとに最適な着色材が用意されているので、それらの中から選択すればよいでしょう。

加工業者の場合、

  • 先ず「染料」という選択肢があるか否か
  • 加工対象の風合い変化がどこまで許容されるか
  • 加工の手間を含むコストメリットはいずれが大きいか

などで判断されます。

染料と顔料の見分け方

まれに質問を見かけますので少し触れます。

パウダー状の染料と顔料を見分ける

まず、染料と顔料を見分ける必要があるケースというのが想像できません。あまりそういうシーンは無いでしょうから、見分ける必要性がありません。

あえて申し上げれば、顔料は一般に水に不要ですので、水に添加し沈殿するか否かで判断できるかもしれません。但し、顔料でも粒子が非常に小さいものは容易に沈殿しませんので確実ではありません。

着色されている製品に染料顔料いずれが使用されているかを見分ける

これもどのようなシーンで見分ける必要がでるのか私には分かりません。成分や安全性が気になる場合でしょうか。ちなみに染料だから危険、顔料だから安全ということは一切ありません。発がん性を危惧される成分ということであれば、染料・顔料いずれにもNG品はあります。メーカーに問い合わせるのが一番でしょう。但しメーカーも着色材の詳細まで把握しているケースは少ないので回答を得るのは難しいでしょう。

加工に精通している方であれば、製品を見れば素材や加工方法からおおよその推測はできます。そうでなければ見分けることは困難でしょう。

塗料やインク製品で顔料及び染料のいずれが用いられているか見分ける

成分表を見ましょう。バインダー(○○樹脂など)の記載があれば多くの場合顔料です。成分表で判断できない場合はメーカーに問い合わせましょう。

見分け方まとめ

  • 見分けることにあまり意味がない(個人的感想)。
  • 加工に精通した者ならおおよそ推測できる。
  • 正確に見分けるのは困難

どうしても確実に見分ける必要があるのであれば、専門家に依頼して赤外やクロマトにより分析するしかないでしょう。このような必要が生じるのは警察の鑑識くらいしか思いつきませんが……余談ですが、警察は犯人特定のために、繊維片や塗料片の分析を行い製品を特定し流通調査などを行います。現場にバインダーを含まない蛍光顔料が残っていたことから、犯人の職業を絞り込むなどの捜査が行われたNEWSもありました。

染料と顔料の違いまとめ

 染料顔料
加工対象へ化学的に作用する作用しない
バインダーを必要としないする
下地の色より淡い色にできないできる
加工方法染色技法塗装技法

その他参考として、Wikipediaでは「着色に用いる粉末で水や油に不溶のものの総称」「特定の媒体に分散するという性質が着色の上で重要なもの」が顔料、「着色に用いる粉末で水や油に溶けるもの」は染料としています。

概ねその通りだと思いますが、染料と呼称される中にも水や油に不溶で媒体に分散することが着色の上で重要なもの(分散染料)も例外としてあります。

引用:Wikipedia 染料 , Wikipedia 顔料

おまけ:染料を顔料のように使用したらどうなる?

染料を加工対象と化学的に反応させることなく、顔料のようにバインダーで塗ったらどうなるでしょうか。結論は染料の粉の色で着色されます。この場合本来の使い方ではないため、耐光堅牢度などが著しく悪く簡単に色落ちする可能性があります。

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