蓄光塗料(夜光塗料)の作り方と塗装方法 ~しっかり光らせるために抑えておきたい重要なポイント~

蓄光塗料(夜光塗料)の作り方と塗装方法 ~しっかり光らせるために抑えておきたい重要なポイント~ 蓄光活用コラム(ハウツー系)
この記事は約10分で読めます。

今回は蓄光塗料の作り方と塗装の仕方をまとめたいと思います。ちなみに「蓄光塗料」と「夜光塗料」はほぼ同じ物を指す言葉です。蓄光塗装で抑えておきたい重要なポイントはたった2つ。後は作業性を高めるためのコツをいくつかご紹介致します。

蓄光顔料の選択 ~ポイントは粒子サイズ~

塗装に最適な粒子サイズ

作業性を優先するのであれば15μm前後の粒子サイズ、発光パフォーマンスを優先するのであれば30μm前後の粒子サイズをおすすめ致します。

小さな粒子サイズの特徴

蓄光顔料は比重が重いため沈殿しやすく、この性質が塗装の作業性を悪くします。粒子サイズが小さい方が沈降速度がゆっくりなので作業性は向上します。

但し、2μm前後のグレードになると分散が難しくなり,二次凝集してダマができたり目詰まりを起こしたりする場合があります。従って分散についてあまり気を使わなくて良い15μm程度がオススメとなります。

大きな粒子サイズの特徴

一方で、蓄光は小さな粒子サイズよりも大きな粒子サイズの方が良く光る特性があります。従って発光能力を優先するのであればなるべく大きな粒子サイズを選択することなるのですが、30μmより上のサイズになると一般的なガンのノズル口径では噴き出しできなくなりますので、30μm前後のグレードが最適ということになります。

樹脂の選択 ~蓄光だからといって特別な気遣いは不要!~

「ウレタン系」「アクリル系」「シリコン系」など塗料樹脂の選択です。

一般的な塗装と同じく加工対象や加工目的から樹脂を選択する

一般的な塗装と同じく加工対象や加工目的から樹脂を選択する

多くの方が「蓄光に最適な樹脂を選ばなければならない!」と難しく考えるのですが、蓄光はほとんどの樹脂と相性が良く、蓄光だからといって「〇〇系を選ばなければならない」というような制限はありません。逆に「〇〇系は避けなければならない」ということもありません。一般的な塗装と同じ考え方で、加工対象や目的により樹脂を選択しましょう。

今回は、加工対象としてホームセンターで購入した「ステンレス薄板」と「アクリル板」、樹脂はウレタン系を使用しました。

水性塗料の場合はちょっとだけ注意

蓄光には「耐水性(水に対する耐性)」が弱いタイプがあります。それらの蓄光は水性タイプの塗料には向きませんので必ず溶剤系を選択しましょう。

また、一般に水性は溶剤系より硬化に時間を要します。蓄光は比重が大きく寄り易いので、水性の方が作業難易度が上がります。可能であれば溶剤系の樹脂を選びましょう。

ルミックカラーで耐水性がないタイプ
・硫化亜鉛系全般
・N_Green G300,N_Green GLL300で(PS2)の記載が無いもの

必ず抑えたい重要ポイント① 透明(クリア)樹脂を選択すること!

蓄光をしっかりと光らせるために抑えておきたい重要ポイントの1つ目は「必ずクリア樹脂を使用すること」です。カラー塗料に蓄光顔料を混ぜると発光しなくなります。何系の樹脂でも一緒です。必ず透明グレードを選択しましょう。

尚、ホームセンターなどでクリア塗料を探すと仕上げ用として提供されているものが殆どだと思います。プロが工数や作業コストを意識するような場合は別ですが、多くの場合はこの仕上げ用クリア塗料で充分です。

着色したい場合はカラー蓄光パウダーを使用しましょう

一般に蓄光顔料には色味がありません。オフホワイトからアイボリー、淡いグリーン色をしています。明るい時にも色があるカラー蓄光にしたい場合はどうしたらよいのでしょうか。 もしご自身で一般的なカラー塗料を混ぜて色を着けた場合、まず発光しなくなります。

カラー蓄光にしたい場合は、着色調整されたカラー蓄光パウダーが提供されておりますので、そちらをクリア樹脂に混ぜて塗料化しましょう。当ページの参考画像はルミックカラーのBlueベース0070番色のBlightを使用しています。

耐光性に注意

ルミックカラーの定番で用意されているカラー蓄光パウダーは、有機着色顔料で着色調整されているので耐光堅牢度があまり良くありません。屋外使用ですと1年は耐えられませんのでご注意ください。

耐光性の良いカラーは特色対応となります。お問い合わせ下さい。

蓄光を塗装する前に ~必ず白で下地を作る~

必ず抑えたい重要ポイント② 下地にホワイトを敷くこと!

蓄光は白など明るい面に塗装した場合と、黒や紺など暗い面に塗装した場合を比較すると、同じ量の塗装でも光る強さに5倍10倍も差が出てきます。加工対象が初めから白あるいは白に準ずる明るい色でない限り、必ずホワイトで下地を作りましょう。

尚、アクリル板など「透明」の場合も白を敷いたほうが良いのは同様です。

下地を敷くもう一つの目的

加工対象がコンクリートや木など塗料を吸いやすい材質の場合、割高な蓄光塗料で目を埋めるのは非常にもったいないです。割安なホワイトで下地を作ってから蓄光塗装した方が経済的です。

下地を敷くもう一つの目的
※今回は下地の有無でどの程度の差が出るかご覧いただだくために半面のみ下地を敷きました
  1. 塗料の食付きが良くなるようペーパーを掛ける
  2. 塗装しない面を覆う
  3. ホワイトを塗装
  4. 半面が下地ある状態

蓄光塗料を作る ~最適な調合比を探そう~

いよいよ蓄光パウダーを使用して蓄光塗料を作ります。

最適な配合比は?

最適な配合比はコレ!…とズバリ明記したいところですが、

  • 蓄光顔料の粒子サイズ
  • 樹脂の粘度
  • 塗装に掛けられる時間
  • 塗装技術

などの要因で配合バランスは変わります。塗装に掛けられる時間は業者さんとDIYで大きく異なります。短時間で仕上げるための対応技術もプロと素人では異なります。

とはいえそれでは始まられませんので…
次に一例をご紹介致します。スタート時の参考にしていただき、それぞれで微調整を行うと良いでしょう。

蓄光パウダーと樹脂の配合比

蓄光パウダーと樹脂の配合比

今回は工場構内や看板などで求められる程度の仕上がりを想定して蓄光塗料を作ってみました。
◆配合比(重量比)
【(樹脂(7):蓄光パウダー(3)):シンナー(3)】

蓄光を含む樹脂量の30%重量シンナー添加

最初は【7:3:5】で作ったのですが、少しシャバシャバ過ぎたのでシンナーを減らしました。
終わった後の印象ですが、【5:5:5】くらいまで蓄光を増やしても良いのかなと感じました。 混ぜる順番はどのような順番でも良いですが、粘土の高い樹脂と蓄光パウダーを先に合わせるとダマができやすいので、希釈剤と蓄光パウダーを混ぜてから樹脂を合わせると良いでしょう。

One Point

コントロール剤を使う

入手可能であれば、例えば関西ペイントのアルミコントロール剤のような、メタリック・パール系の塗装に最適化された剤などを使用すると作業性が高まります。

ストレーナーを使用しよう

蓄光塗料にはストレーナーを使用しよう

蓄光パウダーは練るようにして丁寧に混ぜればダマはできにくいですが、「面倒くさい!」という方やパウダー顔料に不慣れな方はダイナミックにガバっと混ぜてしまうと思います。そのような場合はストレーナーで濾すとダマが取り除かれ作業性が上がります。

蓄光塗料の塗装 ~蓄光ならではのコツ~

いよいよ蓄光塗装です。ここでは蓄光塗装で起きやすい失敗を避けるコツがあります。

蓄光塗装に適さない手法

ここで一つ、蓄光に適した塗装手法について触れておきます。

蓄光顔料の粒子は一般のカラー塗料に含まれる色顔料よりはるかに大きいサイズです。そのため塗料の中で分離しやすく、その性質が作業の難易度を高めています。砂を液に入れかき混ぜ、液中に分散している間に急いで塗る!」といったイメージが近いです。そのため塗装手法の中には蓄光塗装には適さない手法がありますのでご紹介しておきます。

  • ローラー塗装
  • 刷毛塗り
  • 浸漬塗装

ローラーのスポンジや刷毛が蓄光顔料を大量に含んでしまいます。しゃぶしゃぶの時に刷毛でアクを取る時のイメージが近いでしょうか。蓄光顔料が、スポンジや刷毛にどんどん捉まって溜まってしまいます。大量の塗料で大きな面積を塗装する時はそれも問題ないかもしれませんが、小面積の場合には加工面に塗る蓄光よりも刷毛に溜まる蓄光の方が多く経済的ではありません。浸漬塗装も分離が激しい蓄光塗料には向きません。

スプレーの形式

蓄光塗料に最適なスプレーガンのタイプ

蓄光塗料の塗装にはエアーでノズルから塗料を噴き出すガンスプレータイプをオススメしておりますが、ガンスプレータイプの中にも向き不向きがあります。

画像右

塗料カップがガンの上にあるタイプ

沈殿した蓄光がカップからガンへの供給部に溜まりやすく目詰まりしやすいです。こまめに振ってカップ内の沈殿を抑えたり、ノズルを指で塞ぎ逆洗の要領でカップ内の沈殿を抑えながら噴き付けることで塗装可能ですが、コツを掴むのに多少の時間が掛るかもしれません。
カップがガンのサイドについているタイプなどでも,供給部がカップの下部にあるタイプは同様です。

画像左

塗料カップが下にある吸い上げタイプ

こまめに振って沈殿を抑えながら噴き付ける作業は一緒ですが、沈殿した蓄光が強制的にガンへ送り込まれることはないため、比較的詰まりにくいです。

実際に塗装してみました

蓄光塗料を吹き付ける時のコツ

今回は、手持ちの引き抜きタイプはノズル口径が大きすぎるのと吐出量が多すぎることから撮影だけ済ませて、実際の塗装にはカップが上にあるタイプを使用しました。

エアー吹き付けと撹拌を同時に行う

塗料を均一に吹き付けます。何度か重ね塗りすることになるのですが、一回の塗料吹き付け後、塗膜が乾かない内に次々重ね塗りしてしまうとキレイな仕上がりにはなりません。

一回噴き付けたらエアブロー(半握りでエアーだけを塗装面に当て乾かす)・指触乾燥(指先で塗膜に触れ乾燥具合を確認すること)します。その間もカップ全体を回すようにして蓄光の沈殿を抑えます。同じ方向に回すだけでは撹拌になりませんので反対にも回しましょう。

トップコートは必要あるか

使用する樹脂や配合量にもよりますが、おおよその場合で塗膜の厚さよりも蓄光粒子の方が大きいため、塗面が波打ちやすいです。そのままで気にならないのであればトップコートは必要ありません。表面を均してキレイに仕上げたい場合はトップコートで覆いましょう。

耐水性のない蓄光顔料を用いた場合は、雨水や空気中の湿気で蓄光が侵されますので、トップコートを必ず行ったほうが良いです。

One Point

ブラックライトなど確認環境を準備

塗装中に発光輝度を確認したい場合ですが、乾燥していない加工対象を持って暗闇に行ったり来たりするのは大変なことです。のぞき窓を開けたダンボールを用意するなど、加工対象を移動しなくても発光輝度を確認できる準備を前もってしておくと良いです。ブラックライト(紫外線・UVライト)も用意しておくと良いでしょう。

まとめ

蓄光塗装完了。発光した様子。

最後に要点をまとめます。

必ず守りたい重要ポイントは2つ

  • 透明(クリア)樹脂を選択すること!
  • 下地にホワイトを敷くこと!

蓄光顔料の選択

作業性を考えるのであれば15μm前後の粒子サイズ、発光パフォーマンスを優先するのであれば30μm前後の粒子サイズがオススメ。

樹脂の選択

蓄光だからといって特別な気遣いは不要!加工対象や目的により樹脂を選択しましょう。

塗装の前に

必ず下塗りを検討しましょう。

蓄光塗料を作る

最適な配合比は様々な要因で異なります。最初は【樹脂(7):蓄光パウダー(3):シンナー(3)】くらいの割合で試してから調整しましょう。

シンナーの代わりにコントロール剤を使用したり、ストレーナーでダマを取ることで作業性が上がります。

蓄光塗料の塗装

蓄光塗装にはスプレータイプがオススメ。カップが下にある引き抜きタイプの方が作業性が良いでしょう。

塗り重ねはいっぺんに行うのではなく、一回噴いたらエアーである程度塗面を乾かしましょう。その際同時にカップ内の蓄光が沈殿しないよう大きく回したり小振りするなどして撹拌しましょう。

最後に

文字に起こすと結構なボリュームになってしまいましたが、要点を掴んでコツを覚えてしまえば難しいことではありません。市販の蓄光塗料よりも遥かに低コストで様々なカラー蓄光塗装ができるようになります。ぜひお試しください。